シンガポールで運転免許を取るには、どうしたらよいのでしょうか。
なお、シンガポールの運転マナーは東南アジアの中ではまともなほうです。
それでも怖いです。
また、日本とは異なる事情により、独特の注意事項があります。
この国で自家用車を運転する方にはぜひ知っておいて欲しいシンガポールの車事情と運転免許についてお届けします。
シンガポールの車両台数規制について
シンガポールは、国土面積が東京23区とほぼ同じで、人口密度が非常に高い国です。
そのため、車両が増えると渋滞が発生し交通インフラが麻痺します。
したがって、シンガポール政府は登録可能な車両の数を毎年決定し、自家用車の増加を抑制しています。
ちなみに車両台数を制限する代わりに、公共交通機関が素晴らしく発展しているシンガポールでは、車が無くても生活に困ることはありません。
それでもどうしてもマイカーが欲しい方にはかなりの出費が課せられます。
また車両台数制限されているため、購入権利を入手する必要があります。
したがって、海外赴任などで社用車を貸与されるときは、レンタカーであることが多いです。
車両購入費用は日本の4~5倍
車を所有する時にかかる費用は以下の通りです。
日本より高くなる主な理由が、登録料や税金の高さです。
また販売台数も制限されるため、手数料も高いです。
ちなみに、日本で同じプリウスを購入すると諸経費込みでおよそ、260万円。
しかしこれを、シンガポールで買うと、1070万円。
どんな車を買っても、日本の4~5倍以上の価格になるといわれます。
車購入にかかる費用の例
仮に、TOYOTA プリウス 5DR ハッチバック (AUTO) ハイブリッド–1798cc (約260万円)の新車 を買うと (2020年5月)
費用項目 | 内容 | 詳細 | 金額 (S$) | |
---|---|---|---|---|
OMV | Open Market Value | 車両価格 | 政府の統計発表 | 26,807 |
COE | Certificate of Entitlement | 車両購入権 | 入札結果 | 37,109 |
RF | Registration Fee | 登録料 | S$350 | 220 |
ARF | Additional Registration Fee | 追加登録料 | OMVによる100~320% | 37,530 |
Excise duty | 物品税 | 20% of OMV | 5,361 | |
GST | サービス税 | 7%(OMV and Excise Duty) | 2,252 | |
その他 | ディーラー手数料 | 15~50% | 32,784 | |
Road Tax | 重量税 | エンジン性能による | 978(1年) | |
合計 | 143,041 |
また、なんとシンガポールは電気自動車に対し、さらに多額の税金がかかります。
発電量に対して、半年ごとにRoad Taxなどが必要です。
ディーゼルカーにも別途税金がかかります。
では、それぞれの費用項目についてみてみましょう。
とんでもなく高くつく車両購入
車両台数制限制度のため、シンガポールで車を購入するには様々な諸費用が必要です。
とくにCOEは複雑です。
車両購入権 (COE)の取得
まず「車両購入権(COE)」という、「車両を購入するための権利」が必要です。
そのうえ、車両購入権は数に限りがあります。
これで政府はシンガポールの車の数をコントロールしています。
この車両購入権は公開入札で行われ、月2回のオンライン入札で金額が決定します。
このCOEの有効期限は10年。10年後に更新したいときは、その時点の価格で更新できます。
しかし、年々割高になっている状況です。
なお、金額は排気量や用途、時期によって異なります。
カテゴリー | 2020年3月の価格($) | |
---|---|---|
A | 排気量≦1600㏄かつ≦97馬力 | 31,210 |
B | 排気量≧1600ccまたは≧97馬力 | 30,012 |
C | バスや商用車 | 22,002 |
D | バイク | 4,489 |
E | その他 | 32,500 |
ちなみに2020年3月、1600㏄以下かつ97馬力以下の車で約250万円です。
車両代ではなく、車両を購入する権利に、です。
そして2023年10月には、円安の影響も加わり、同排気量の車のCOEは1000万円を超えました。
車両購入権 (COE)の入札方法について
なお、落札成功者は全員、自身の提示額ではなく、「落札失敗者の提示した最高金額+1$」を支払います。
なお、10年以内に車を手放すときは、日割り計算で返金されます。
そして、中古車を買うときはCOEを有する期間分の価格が、車両購入価格に含まれます。
したがって、ほとんどの場合、新たに自分でCOEを取得する必要はありません。
また、この金額の支払いが厳しい場合は、オフピークカーにする選択肢もあります。
オフピークカーとは
あまりにも高い車両購入権利COE。そこで「オフピークカー」を取得すると、車両購入権や追加登録料の一部が返金されます。
これは、走行できる時間が決められている車で、赤いナンバープレートをつけています。
ちなみに、オフピークカーには2種類あり、Weekend Car(WEC)とRevised-Off-Peak-Car(ROPC)と言われ、走行できる時間帯が異なります。
(以前はもう1種類Off-Peak-Car(OPC)がありました。)
そして、オフピークカーは平日の午前7時から午後7までは運転できません。
また、大きなイベントがある祝日も運転できません。
なお、この制限時間外に運転したい場合は、1日パスを20$で購入する必要があります。
もし間違って制限時間外にパスなしで走ってしまった場合、監視社会のシンガポールでは逃げられません。
その翌日の23:59までにパスを購入する、またはさらに3日の支払い猶予を申告して支払うことが出来ます。
そして、支払わないまま5日が過ぎると、初回でも最大5,000$の罰金が課せられます。
このように、シンガポールで車を買うには、車両だけでなく、このややこしい権利を選んで購入する必要があります。
ナンバープレート
ナンバープレートを希望のナンバーにする場合は、シンガポール陸運局(LTA)が行なっている入札に参加しなければなりません。
ちなみに最低入札価格は、S$1,000からです。
これもかなり高いですね。
購入後の維持費
自動車保険については、保険会社によりますが、日本と同様に年齢や運転歴によって保険料金が異なります。
また道路税は、車を登録すると納付が必要になる税金です。
半年または1年ごとに前払いする形で支払います。
なお、金額は車のエンジンの種類と排気量により異なります。
ERP(Electronic Road Pricing)
シンガポールには、電子式道路料金システム(ERP)があります。
市街地で自動的に通行料金を徴収され、車両購入権の導入理由と同様に、渋滞を緩和させるためのシステムです。
とくに混雑する地域や時間帯に運用されています。
このシステムでは、道路上のERPゲートを通過すると、車に搭載された機器と通信し、自動的に料金が引き落とされます。
ERPの料金は通行する車種、道路や時間帯によって変わります。
なお、金額は道路や時間帯により異なりますが、ゲートを通るごとに約〜6S$が必要です。
ただし、内容や額などは頻繁に変更されるので公式サイトを確認ください。
ちなみにこれも、道路の混雑を回避しようという政策です。
ただ、ERPのゲートの手前で高速道路を降りようとする車が、混雑を作っていることもあります。
こんな車、結構見かけますが、シンガポールでは余裕で億を超えてきます。
恐ろしく高額な自動車保有システムによって、シンガポールは渋滞が少ない環境を保っています。
ちなみに、車に搭載義務のある支払い用システムの未搭載や、料金の入金額の不足などでERP支払いができなかった場合は、すぐに罰金支払いの連絡が来ます。
怖いです。
車の乗り方
シンガポールで運転するのために必要な情報をお伝えします。
会社貸与の車を運転する場合もあるかと思います。
電子式道路料金システム (ERP) と支払い用カードおよびチャージ (Top UP)
ERPは通信による自動支払いのため、車内にIUと呼ばれる専用機器の設置が義務付けされています。
ETCのような機器にカードをセットして使用します。
カードは各銀行やセブンイレブンなどで入手できます。チャージ (Top Up) は銀行ATM、スタンドや駐車場の機器、セブンイレブンなどで行えます。
また、チャージしなくても使えるクレジットカードも存在します。
このIUは、ERPだけでなくゲート式の駐車場の支払いにも使用でき便利です。
ゲートに近づくだけで支払いができます。
こちらも便利ではありますが、入金漏れなどで支払いが一回でも滞った場合は、すぐに罰金が科されます。
高速道路
高い車両価格のいっぽうで、高速道路は無料です。
原則90㎞/h制限。
少なくとも車は、みんなきっちり守ります。
ほかは日本と変わりなしです。
監視カメラも設置されています。
なお、速度監視カメラは後方から撮影します。
日本人でも、これに撮影され罰金となった人がかなりいます。
とくに下り坂には気をつけて!
駐車場
シンガポールは、国土の面積の割に駐車場が充実しています。たいていどんな施設にも駐車場があり、HDB(公共団地)の地上駐車、建物の地下や路上駐車などがあります。
したがって、公共施設ではたいてい誰でも停められます。
ただし、駐車場にひかれているラインの色によって、停めてよい車が制限されています。
詳細はこちらをご覧ください。
ガソリン
ガソリンの入れ方は、日本と同じです。
ちなみに、レギュラーで280円/Lなのでとてもお高いです。
車検
シンガポールの普通乗用車の車検は、新車登録から3年目、その後は2年毎で、10年を過ぎると毎年になります。
ちなみにシンガポールの車検は、基本的には日本のユーザー車検の様なものです。
自分で車を持ち込みレーンに並び、あとは検査員に任せてレーンの出口で待ちます。
検査自体は10分くらいで終わります。
ただし予約制ではないので、混み合っている時はかなり待つことになるかもしれません。
なお、普通車の車検にかかる費用は約60ドルです。
検査の過程で不備や不具合などがなければ、担当した検査員の署名つきの合格証が手渡されます。
この合格証は、次回の自動車税を納めるまでの間保管していれば良いので、法的な効力はそれほどなく、納税後は捨ててもいいようです。
ちなみに、シンガポールで車検が受けられる場所は民間の車検場で、政府が運営している車検場はありません。
社用車の方は、朝に車検代行の人が車を引き取りに来てくれて、夕方には返却される、といったケースが多いです。
車の運転に便利なスマホシステム
地図アプリ:シンガポールは一方通行が多いので、必須です。
ナビがついている車の場合は無くても良いです。
路上駐車場の料金を払えるアプリ:路上の駐車場料金はこれで払うため、運転する人には必須のアプリです。
なお、スマホを車に固定するホルダーが便利です。
日本同様シンガポールでも、さまざまな種類が販売されています。
シンガポールの運転免許取得 (国際運転免許証からの切り替え) について
シンガポールでは、短期滞在者は自国から発行された有効な国際運転免許証または運転許可証(International Driving Permit)があれば運転できます。
しかし、12か月以上シンガポールに滞在して運転し、日本の免許を持っている方は、免許の切り替え (コンバージョン) が必要です。
また、住民権 (EP, DPなど) および永住権取得者は、住民権または永住権を取得したらすぐに、外国の運転免許証を切り替えます。
詳細については、シンガポール警察ホームページの「CONVERSION OF FOREIGN DRIVING LICENCE」を参考にしてください。
免許切り替えの条件
運転免許切り替えの申請手順
シンガポールの運転免許を取得するには、まずはBasic Theory Test (BTT) に合格することが必要です。
BTTを予約するには、3つのドライビングセンターのいずれかを選択します。
オンラインで予約ができるようになりました。
模擬テスト込みのパッケージコースなども提供されています。
しかし、自主学習や警察提供の無料の模擬テストで勉強する人は、Self-study packageなどのほうがお得です。
BTTの勉強
シンガポールで運転免許をスムーズに取得するには、BTTの勉強が必要です。
問題自体は簡単ですが、英語で受験する必要があり専門用語に慣れが必要です。
教材は本屋でも購入可能です。
さらに、警察の公式テキストのダウンロードが可能になりました。
かつて、重宝されたテキストはもはや不要です。
また、「BTT pdf」などで検索するとWeb上でもテキストが入手できます。
ただし、掲載ルールが古い情報の場合があるので、気を付けてください。
模試 (Mockup Test) を受けてみよう
なんと、模擬テストも用意されています。
実際の BTT と同じような模擬テストがあります。
したがって、この模擬テストを 10 回~15 回繰り返すことで合格率を上げることができます。
シンガポールの公式アプリSingpassから申請して受講します。
ちなみに2019年ころは、下記手順で足を運び申し込みしていました。
なお予約は、BTTを申し込んだ会場のWeb上で行います。
- ログイン (FIN No.と予約時にもらったパスワード)
- Booking and Cancelationをクリック
- Book a Theory Test / Trial Test をクリック
- 受けたい日時を選択し、クレジットカードでお支払い
※Theory Testは時間いっぱい実際の試験問題を解いて答えがすぐにわかる。
Trial Testは50問のテストを受けて合格・不合格がわかる。
BTTを受験する
BTTの試験当時は、15分前までに会場に行き、IDを見せ入室し、指定された番号の席につきます。
なお当日、できれば早く行って模擬試験を受け、本番に臨むと良いでしょう。
PCタッチパネル上でのテストで、その場で結果が分かります。
テスト時間は45分間、50問中45問正解で合格です。
引っかけ問題などはないため、一通り問題集を実施した結果、10分くらいで終わり満点が取れます。
免許の切替え申請
BTTに合格すれば、Traffic Policeで外国の運転免許証の変換を申請することができます。
ちなみに現在は、Singpassを通じてオンライン申請によるライセンス取得ができるようになりました。
絶対に無くさないので安心です。
オンライン申請する場合は、ここから先の手続きは不要です。
警察署での切り替え申請場所
テストの後に申請する時間がある人は、当日に必要な書類を持参しておくと、そのまま直行できます。
警察署での切り替え申請手順
全体的な流れとしては、Traffic Policeに着いたら、Conversion Driving Licenceの申請書類を書いて番号札を取り待つだけです。
具体的な手順は以下の通りです。
Traffic Officeに着いたらゲートでIDと電話番号を伝えてパスをもらい入り口へ
入り口で番号札(Q-ticket)を発行する。
Driving Licence→Foreign Driving Licence Conversion→EP/DP Noを入力
申込書を記入します。わからないところは空けておいても大丈夫。
カフェテリアでお茶して待ちつつ、自分の番号が画面に出たらカウンターで手続き。
仮免許を貰って終了。
警察署での切り替え申請書の書き方
申込書の書き方はわからなかったのでこんな風に書き、問題なく通りました。
あくまで参考までに。
ちなみに、安全ビデオ講習が過激と聞いていましたが、2019年7月時点では無くなりました。
なお、手続き自体は5分程、すべて終了後、仮の免許として紙ぺらをもらいます。
そして、本免許は10日ほどで送付されます。
実際には3日で届きました。
近々、日本の有効な免許を持っていればテストなく切替えだけで免許が手に入るとの情報があります。
免許の更新
外国人の免許は、5年ごとの更新です。
こちらもSingpassアプリを通じてオンラインでできるようになりました。
シンガポール特有の運転の怖さについて
ここからは、シンガポールで運転して気づいたことを挙げます。
先に知っておいてもらえたら、面食らうことも少なくなると思います。
なお、シンガポールの運転ルールは免許を取得時に学びますが、実態はこんなものです。
ただし、速度だけはバッチリ守ります。
車線変更の恐怖
シンガポールでは、慣れないと車線変更がめちゃ怖いです。
市街地では特に、車間距離が短い上に、ウインカーを出さない、出しっぱなしの車がガンガン車線変更してきます。
首都高の運転が怖いレベルの私には、運転は無理です。
バイクの恐怖
車の値段が高いのでバイクの台数が多いです。
このバイクのマナーがめちゃくちゃで、高速道路でも車と車の間を走り抜けていきます。
車はきっちり速度を守るのですが、バイクは車の間をすっ飛ばしていきます。
車線変更時には特に注意ください。
高速道路の恐怖
また高速の出口を出たらすぐ分岐があったりします。
あ、と思ったときには手遅れです。
さらに、一般道も一方向道路が多くややこしいので、Googleマップが必須です。
まぁ、間違ってしまってもシンガポールから出てしまうことはないです。
さらに高速道路も無料なので、落ち着いて迂回路を選択しましょう。
バスレーンを走行してしまう恐怖
バスレーンには、走行制限があります。
ラインの色で走行可能時間帯が分けられています。
ただし、制限時間帯はほんの少しでも絶対に走ってはダメです。
たまにちょっとの距離だけと思っているのか、走っている車がいますが、絶対にやめましょう。
制限時間帯は、左折時でも、バスレーンの車線を越えられるのは点線のエリアだけです。
ルールの詳細は、免許取得時のテキストを確認してください。
ちなみに、シンガポールでは、個人が違反を報告できるシステムがあります。
写真を撮られて報告され違反キップを切られた同僚がいますので、くれぐれもご注意ください。
必ず止まって歩行者優先、見落としの恐怖
シンガポールでも、車より歩行者が優先です。
みんなきっちり守るどころか、ずいぶん前から止まって待ってくれます。
横断歩道の道路マーキングだけでなく、黄色いポールが立っているので見落とさないように気をつけてください。
乗り合いトラックの恐怖
こんなのあり?荷台に何人乗せる気?アジアでは普通のことです。
車両後方の黄色の丸の中に搭乗人数が書かれています。
シンガポールでは、車の購入費がとんでもない高額なので、乗り合いトラックで出稼ぎに来る方がたくさんいます。
お隣のマレーシアの約3倍のお給料がもらえるそうです。
落ちてきそうで怖い。
また、シンガポールでは車によって制限速度が異なります。
黒丸の中に白字で制限速度が書かれているので、注意してください。
最後に
シンガポールでは65歳以上の方の免許更新には少なくとも病院の健康チェックが必要です。免許のカテゴリーによってはドライビングテストも必要です。日本もそろそろ必要じゃないでしょうか。
シンガポールでの車の運転は、日本と異なる事情が多々あります。それでも自家用車はやっぱり便利。社用車を貸与されることもあるかと思いますが、ルールを守って安全運転を心がけてください。
ちなみに、「L」のナンバープレートは路上講習中の車です。初心忘れず、安全運転で。
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