シンガポールでは、電動キックボードは、E-SCOOTERやPMD(Personal Mobility Device)と呼ばれました。シンガポールでは、住民も観光客も多くの人が利用していた移動手段のひとつです。利用方法は、購入、レンタル、シェアと多岐にわたりました。
ところが事故が多発し、今は歩道を走れなくなりました。さらに登録制が開始。安全基準を満たしていない電動キックボードは、処分対象へと変わりました。
次には、車検場で電動キックボードの点検が義務化され、規格外のものは登録抹消されることに。運転手は専門テストを受験し合格しなければならなくなりました。
シンガポリアンが親しんだPMDへの変わりゆく姿をご紹介します。
電動キックボードがシンガポールで広まっていた理由
かつては、スーツを来た人がキックボードで通勤している姿を見かけました。こどももおとなも電動キックボードで移動していました。
シンガポールは国土面積が東京23区くらいしかなく、観光エリアはさらに狭いです。 またこの国では、自家用車の所有が制限されており、購入には莫大な費用がかかります。そのため、居住者でも車を持っていない人が多く、移動は公共交通機関などに頼ってきました。
そこで、電動キックボードや電動自転車、電動バイクに関する法律の整備を行いました。結果、全国的な普及へとつながりました。特にシンガポールでは電動キックボードは歩道を走行することができたため、利便性が日本に比べて各段に良かったのです。
観光の場合は、公共交通機関やタクシーを利用するまでもない移動距離のことが多いのですが、建物が大きく歩くには時間がかかり暑くて汗もかきます。電動キックボードを利用することで時間も体力もセーブできます。
また自転車と違い、服装にとらわれる必要がなくスカートやサンダルでも乗ることが可能でした。(危険なのでできるだけ避けたほうがいいですけどね。)
国ごとのルールを知ろう
電動キックスボードの取り扱いは国ごとに全然違います。
シンガポールではPMDは車道は走ってはいけませんでした。また最高時速も決められています。さらにPMD本体のサイズに制限があります。
それでも、2019年までは車に比べるとずいぶん手軽に乗ることができました。
とろこが、歩行者との接触事故が絶えず、また粗悪な品質のバッテリーによる火災が頻発しました。
そしてついに2019年、PMDの利用ルールに関して大幅な改定が施されました。PMDの歩道走行は禁止され、サイクリングパスしか走れなくなりました。
2020年1月からは歩道を走ると、最大2,000Sドルの罰金または最長3カ月の禁錮刑、あるいはその両方を科されます。
さらに、現存の電動キックボードがこの制限に合致しているか、車検場での点検が必須に。登録しナンバーの掲示、運転テストに合格する義務が課されることになりました。
では、どうすれば、電動キックボード(以下、PMDと呼びます)に乗れるのでしょうか。
具体的な手順については、LTA(Land Transport Authority)が発表しています。
電動キックボードの登録義務化、罰則有
2019年7月以降、車両の登録が必要になりました。この先は、バッテリーの安全基準を示したUL2272のシールがある車両のみ使用できます。
現存の車体は、写真を登録し、送付される登録証を車体に添付することになります。
現時点ではUL2272の証明シールがないものは販売禁止となっています。中古の個人売買などには気をつけてください。
登録方法
登録はこちらからできます。事前にSingPassの登録が必要です。
また登録後3日以内に、自分で登録番号のステッカーを添付しなければなりません。シンガポール国内であればわずかS$1で作って送付してくれるショップがあります。Print By Phoneとありますが、ネットでのオーダーが可能です。
このお店で「E-Scooter Identification Mark」 で検索し、形状や色を選んでオーダーしました。ビジネスデイの翌日には家に送付されます。
読者様より、Print By Phoneで注文したステッカーが届かなかったという情報を頂きました。「LTA IDENTIFICATION STICKER or LTA IDENTIFICATION MARK」などで検索すると、ほかにもお店はあります。可能であれば近くのお店に直接行って、その場で印刷してもらうのが確実でしょう。
Where to get cheap e-scooter Identification Mark sticker printed | $2 only
さらにはシンガポール当局からの警告で、要求形式に準拠しないステッカーを販売しているお店があるようです。Onemortoringのページで、ステッカーの仕様を十分確認して注文ください。
安全基準外のE-Scooterの処分について
そして、UL2272の安全証の添付がない車両は、2020年の7月からは絶対に乗ることができなくなりました。残念ながら、我が家の一台は処分となりました。
一応の補償として期間内の処分に限り100ドルもらえました。
2019年12月31日までの処分手順
- 銀行アカウントを用意する。
- 「www.onemotoring.com.sg」 に SingPass/CorpPassを使用してログイン。
- ダッシュボード上の“Your vehicles” セクションで、処分する電動キックボードの登録番号を選び、“E-scooter Disposal”をクリック。銀行アカウントの登録が必要です。
- 申請内容を入力し、確認SMSを受け取る。
- 確認SMS、EPなどのID、電動キックボードを持って所定の位置「any designated disposal points (PDF, 412kb)any designated disposal points (PDF, 412kb)」へ行く。スクーターが基準を満たしていれば、処分後2週間以内に銀行アカウントに100ドルが入金される。
廃棄
2019年12月、廃棄しました。寂しいです。わずか1年間、お世話になりました。
たくさんの住民が次々に持ってきます。最終的にはトラックで運ばれていくんですね。この後、100ドルが我が家の銀行に入金されました。
たくさんの高価な電動モビリティが回収されました。
安全基準を満たす登録車両全車の検査
無事登録が完了した車両でも、車検場で検査を受け合格する必要があります。LTAからの連絡に従い、充電をした車両とIDを持って車検場へ行きます。
テスト自体は30分程度で完了します。車検代は30ドル。
適合していればそれで終了。基準に適合していなければ登録が抹消されます。
走行できる場所も極めて限られるうえに、登録に車検にテスト。もはやこの先の工程に進めるのも乗るのもイヤになってきました。
運転者の専門テスト合格の義務
いよいよ、運転者はテストに合格する義務が課されることになりました。自動車運転免許証とは別のものなので、別途試験を受ける必要があります。
30分のオンラインテストなので、運転免許よりは簡単ですが、それでも面倒くさい。そのうえ走れる場所がかなり限定的。
昨今PMDにはめっきり乗っていないので、もうテストは受けないと思います。フードデリバリーなど、仕事で必要になるときまで保留します。
受験自体は、LTAが提供するハンドブックを読み、オンラインで登録して受験するだけです。
結局、現存のPMDに乗るには3つの試練を通過しなくてはいけません。また新しく買っても適性検査を受けたうえで、サイクリングパスを走行できるだけです。
未登録の電動キックボードでの走行は違法です。 初犯で、2,000ドルの罰金および/または最大3か月の懲役が科されます。
また非安全準拠の電動キックボードで公道走行も犯罪です。初犯で10,000ドルの罰金および/または最大6か月の懲役が科されます。
もはや自転車最強説
ルールを見ると、今後は自転車が最強です。歩道も車道も走れます。でも暑いシンガポールでは、ちょっとしんどいですけどね。幸い我が家の周りは平たんな道路が多いのでゆっくり走る分には問題ないです。
業務に使用しないならPMDを購入するメリットはありません。
ということで、自転車を買いました。
今後日本から来る際は、折りたたみ式自転車を持ってくるのもありです。
それでも購入するならこれがおすすめ!パンク修理材の導入も
それでも、電動キックボードが欲しい場合、購入する際に気になるのは、
- 本体価格
- バッテリーの持ち時間すなわち走行できる距離
- 安全性、信頼性
などでしょうか。
おすすめは、Xiaomi MiJia Electric Scooter (UL2272)
Xiaomiは世界での信頼が厚く、10年以上にわたって、消費者にとって優しい価格帯のブランドとして愛されています。
MiJiaの走行はとてもスムーズで、傾斜でも安定して加速し、俊敏な動きで制御も容易です。 頑丈な造りで外観も人気。 バッテリーサイズも充分で1回の充電で最大30km走行できます。 値段と品質のバランスが取れた最強の一台です。
タイヤのパンク対策
ちなみにタイヤが小さいので段差を超えるときにタイヤにかなり力がかかります。パンクしやすいことで有名なので最初からパンク修理材を入れておくことをお勧めします。
Tirecare Endurance Tyre Tube Puncture Sealant (160ml)www.falconpev.com.sg
そしてもしパンクしたら、E-scooter屋さんで交換してもらうべき、です。
私はというと、調子に乗って修理材も入れず、相当な頻度で使用しているとついにパンクしてしまいました。今後の心配をなくすため、ノーパンクタイヤを装着することに。
自分で交換するという手段に出ました。ノーパンクタイヤを購入し他の方の作業映像を見真似て交換しました。
結論を申し上げますと、二度と交換作業はしたくないです。丸一日分のパワーを使い果たして1週間後も筋肉痛です。
タイヤを外すまではまだよいのです。
泣くのは装着するとき。小さい径のノーパンクタイヤは全く伸びず、電子レンジで30秒ずつ温めて触れるギリギリまで温め、2人がかりで全体重を使って押し込む作業でした。靴の底は溶けるし、指も火傷しそうだし、もう力が入りません。
しかももし、近くでタイヤ交換をしてくれるお店があるのなら、個人的にはあまりノーパンクタイヤはお勧めできません。
振動が大きくなり乗り心地が悪化、路面が濡れていると滑ってドリフトしまくり、です。絶対にパンクしない安心と引き換えの選択です。
電動キックボードは日本でも買えるのか
また日本で電動キックボードを買って持ってくるには、登録や検査、試験受験など課題山積です。
日本でも電動キックボードが買えます。 、日本で公道を走行する際は原付バイク同様、免許やヘルメット着用などが必要でした。
正直ヘルメットをかぶるなら、バイクに乗ったほうが早いし安全です。
当然ナンバープレートも必要でしたし、最高速が20km/h未満の場合に、速度計、ウインカー、テールランプ、ブレーキランプが最低限必要です。かなりめんどくさい!
それでももし買うなら、タイヤが小さすぎないこと(走行快適性に影響)、バッテリーの持ち(走行距離)、充電方法(手順が面倒なものもあり)などに注意してください。
日本で買ったPMDをシンガポールに持ち込むには、もちろん登録、検査、試験合格が必要です。検査も罰則も厳密で面倒なので日本からシンガポールへの持ち込みはお勧めしません。
最後に
歩行者専用道路も多く道幅も広い、そんなシンガポールでも自転車のような簡易的な利用はできなくなった電動キックボード。日本ではどれほど普及するのか、、難しいところだと思います。
この国は、公共交通機関がかなり発達し安い上、タクシーなどの配車も日本の半額くらいで、移動にはさほど困らないのが実状です。
また国の造り上、物事の決定が早く、良いモノはすぐに取り入れてチャレンジし、危険とみなせばすぐに制限・禁止されます。
今回の急な決定により困ったのが、フードデリバリーサービス業にかかわる人たち。そしてそれを注文する我々市民です。でもさすがシンガポール。政府から援助が発表されました。
現在のデリバリー業界では、電動自転車が主流になっています。でも、歩道走行などの危険走行が散見されるので、みんなが気を引き締めてルールを守らないとこれも禁止にされちゃうかも。
コメントやアドバイスをいただけると嬉しいです。